2021/10/15

『BANANA FISH(全24話)』/アニメ《感想》時代背景が変更。孤独な天才少年に安寧のときは訪れるのか。彼が手を伸ばした先は……。

あらすじ&おすすめポイント
    「バナナフィッシュ」とは何か。高飛び競技のスランプに陥った奥村英二は、カメラマンの伊部に気晴らしにとニューヨークへ連れられ、そこでアッシュという青年と出会う……。

  • 少女漫画。ブロマンスもので、ニアBL作品。

感想とネタバレ

原作漫画の完結から、二十数年経ってのアニメ化です。
この作品がまさかアニメで見られるとは思いませんでした……(歓喜)。

ただ、原作とは時代設定を変えてきているので、当時のあの雰囲気が表現されなかったのは、残念でした。特に原作のワールドトレードセンターの描写は胸を打つのですが……重要な心理的描写が……抜けている悲しみ。あのシーンに重きをおいてしまうと、ないことへの違和感が出てしまいます……。  

とはいえ、自分のお気に入りのシーンばかり読んでしまう漫画(本)とは違い、映像だと勝手に流れてくるので、ゴルツィネ氏がアッシュを好きすぎて、めちゃくちゃ片想いだったところとか、嫉妬メラメラなユエくんも実は……という受け取るイメージがかなり違って良かったです。

制作陣さんのおかげで、自分で感じるものには限界があるなと改めて思いました。新しい解釈と言いますか、見方が変わって新しく作品を見れた部分があって良かったです。

アッシュとユエくん

特にユエくんの心情はわかるようで、わからなかったので動画になって感情も乗って理解できそうな幅が増えました。原作記事にも書いていますが、個人的にユエくんの行動が昔からいまいち良くわからず……。

二人に、特にアッシュに固執しているのはわかるのですが……救われたいと願うアッシュに、救われたいと願うことを許さないユエくんということなら、所々蛇の描写があったので、メタ視点でいけば、ユエくんはアッシュを誘惑(堕落・堕天)する悪魔の立ち位置ともとれるのかもしれません(??)

アッシュとユエくんを比較するならば、「それ」を求めているか・求めていないか。なのかも知れません。それは、神さまでもいいし仏さまでもいい、アッシュにとってそれが、英ちゃんだった。自分の存在が絶対に脅かされず、ここにいてもいいのだ。という謂わば、生存権への望みは、人の究極の願いかと思われます……。

それは、アッシュが幼い頃からずっと求めていたもので、そして、おそらく誰しもが必要なもの。自分がここにいてもいい、という肯定を承認されないことへの恐怖と絶望は言い知れません。(自分の力ではどうにもできない)誰かに救ってほしい。ありのままの自分を認めてほしい。アッシュの祈りのような願いを通じて読者も胸を打ちます……。

なので個人的におもしろいなと思ったのは、英ちゃんの存在を理解できない人が結構いることです。ネット社会でその声を聴くことが多くなったのかもわかりませんが、もし、増えていたとしたら、そういうものを求めない時代になった?と考えたら面白いです。こういうのは普遍的なものかと思っていましたが、そうでもないのかもしれません。

オマージュ作品の『ライ麦でつかまえて』も併せて読むと、ライ麦の著者がどれだけ心の内に救済願望があったかよくわかります……。逆に自分が他人を救いに行く(タイトル)までして救われたいというまさに悲鳴のような願いが作中にあることに胸を締め付けられます……。

アニメ化といえば、声がつく!

アニメ化するにあたって、漫画が先だと自分で声を作ってしまう問題。個人的にはアッシュはもう少し違った声をイメージしていました。ちょっと思ったより薄い感じでした。彼自身ちょっと幸が薄い(…)ので合っているといえば合っているかも……(!)

で、! 英二役の方は、地味に推している野島健児さんが英ちゃん(!)ということで、よろこびました。

やはり最終話は神回でした……。野島さんの英ちゃん…最後のシーンは涙なくして聴けませんでした……。自分がイメージする英二の優しい声にドンピシャでした……。ほんとうに本当にありがとうございます……(こちらが……浄化された……)。

もうこれがすべてで満足です……。

原作好きな方でアニメはちょっと……という方は、この最終回と第一話、アッシュが英ちゃんに見とれたあの跳躍のシーンがもう本当に最高ですので、そこだけでもご覧になってみては如何でしょうか……。

本当にアニメ化していただきありがとうございました。



公式サイト等



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