2019/11/16

『春と修羅(第一集)』/宮沢賢治




わたくしのすべてのさいわいをかけてねがう 「春と修羅(第一集)永訣の朝」



感想とネタバレ

どこかの誰か曰く、これは詩ではない、と聞いたことがあります。
確かに本人も「心象スケッチ」と言っているので読んでみると詩というよりは、シュルレアリスムの言う、自動手記みたいな感じの印象が強いかもしれません。
もちろんそれよりかは意味がわかりますが、直感的な作風がそのような感じです。

教科書に載っていた「永訣の朝」はこの中(第一集)に収録されていました。
さいごの一行がとても好きです。
どうしようもない悲しみの嘆きが、しかし、運命(さだめ)を受け入れているのがわかる文章に光を見いだします。
もちろん内実「修羅」だとは思いますが……。
修羅にならないように必至に生と死を悟ろうとする宮沢賢治の願いといいますか……。

そこでタイトルが気になります。 なぜ、春なのか。
修羅になる賢治の心によりそうのは「ひとわんの雪」なのに、「春」なのはどうしてなのでしょうか。
そこでふと思い出したのは某アニメ『フルーツバスケット』で印象に残る台詞「雪は溶けたら春になる」というフレーズです。
このタイトルの「春」とはそういう意味も込めてつけてあるのかもしれません……??

二集も続けて読んだのですが……一集の賢治節が消えてしまっています(※個人の感想です)。
急いで作ったのか、はたまた誰かを意識したのか……はわかりませんが、忙しい方はまずは一集を読むのをおすすめします。

一集は宮沢賢治の世界観に触れることができて読んでいてとても楽しいです。



なにもかもみんなたよりなく
なにもかもみんなあてにならない
これらげんしやうのせかいのなかで 「春と修羅(第一集)過去情炎」




著者:宮沢賢治
出版:青空文庫