2021/04/12

『モモ』/ミヒャエル・エンデ(大島かおり:訳)《感想》時間を支配しているのはだれ? 彼らから「時間」を守ろうとする少女のお話。

作品紹介
  • 著者:ミヒャエル・エンデ
  • 訳者:大島かおり
  • 出版:岩波書店


時計というのはね、人間ひとりひとりの胸のなかにあるものを、きわめて不完全ながらもまねて象ったものなのだ。
(略)
人間には時間を感じとるために心というものがある。 そして、もしその心が時間を感じとらないようなときには、その時間はないも同じだ。 236p


あらすじ&おすすめポイント
    町にモモがやってきた。みんながみんな、モモが大好きで、モモに会いに行く。しかし、音を立てず静かにゆっくりと這いよる陰がモモとみんなの絆を変えていく。モモはその陰に光をあてることができるのか……。

  • ドイツ文学です。児童向けでとても読みやすいのに、難解度が高めのSF作品。
  • 小学生高学年向け/SF冒険譚/時間/

感想とネタバレ

会社の休憩中に、『100de名著』というテレビ番組でこの作品の紹介をしていました。
自分のブログなので正直に書いてしまいますが、地味にオカルト系も好きだったりします。
なのでネサフをしていたら、「時間の概念は今我々が感じているものとは違う」という話をちらほらとみました。
どういうことだろうと、それを理解したいけれど全く理解できない状態でいたら、「時間」をキーワードにしたおもしろそうな作品と出会ったので読んでみました。

前半は、モモと身近な人との人間模様のお話。
後半は、モモの冒険のお話。
の構成になっています。

本には「小学生高学年向け」と書いてありますが、N〇Kさんで「名著」と紹介する通り、成人した人間が読んでも十分考えさせられる厚みのある作品です。読みやすいので、高校生~大学生とかでも、時間のある在学中に読むのはありです。

本は巡り合わせですから、自分にとってはこのタイミングがベストとは思うのですが、もっとはやくに知りたかった作品です。

主人公モモの魅力について

アフロヘアーのモモちゃんという、萌えアニメにどっぷり浸かっている人間にはちょっぴり想像しにくいキャラ描写の女の子が主人公です。固定観念でアフロヘアーは男の人のイメージが強かったので女の子というのにそうくるのか……と、一種の戸惑いを感じた自分です。物語は想像とはいえ、この作品の最初の世界構築にはなかなか斬新でした。日本だと文化的におさげな感覚なのでしょうか……(謎)

前半、読み始めると、捻くれてしまった自分はこう思ってしまいました。
なぜ? なぜモモちゃんはこんなにみんなに人気があるのだろう?
子供から大人まで、みんながみんなモモちゃんに首ったけなのはどういうことだ?
作品のモモちゃんは、しっかりとしたふつうの人間の女の子なのに、読んでいくとまるで女神か天使かのような存在にまで膨れ上がっているような……。謎の持ち上げよう。

その理由を漠然と考えたときに、昔「KY(空気読め)」という言葉が流行りましたが、その空気を読むことのできる人なのかもしれないな、というのが頭をよぎりました(KYの言葉を初めて知った方はググル先生へ)。

その人類共通の空気を読んでいる人間がモモちゃんだとすると、そんな人がいっしょにいてくれるとうれしいし、話を聞いてくれるともっとうれしい。悩んでいるとき悲しいとき、モモちゃんを思うだけで元気になれる。 そんな人間いるか?!という、冒頭のモモちゃん上げの部分に納得がいく気がします。

訳者のあとがきをみても、どこの組織にも関わらない(浮浪児)だからこそ、なんのしがらみも持たないという原初の人間の空気を受け入れる(持っている)ことのできる人物として描かれているのかもしれません。すべての存在を理解し肯定し、ゆるしてくれる存在……。うっ、モモちゃん好き……ああ、女神。マジ、天使。と読み終わると読者まで作中人物のようになるわけです。

ええ、そうですとも。読了した今では、立派なモモ全推しです。

最大のポイント:じかんとは何か。

冒頭の引用部分にすごくはっとさせられました。
この引用での「時間という概念」はたしかに誰でも気づいて疑問に思う部分だと思います。好きなことをしている時間と嫌なことをしている時間の長さが物理では同じでも、気分次第ではあきらかに違う気がする……という当たり前だけれど、謎現象。

このお話の引用をもとに考えていくと時間とは、意識の流れる早さということになるのでしょうか。

……?

自分で書いていても意味が分かりませんが、ようするに「認識」のことなのでしょうか?
「時間」は物理(三次元)ではなく違うところにあるということ……(??)我々の意識というものは三次元ではないとかそういう……おそらく、あの部屋の花も関係あると思うのですが……因果関係もありそうですが……。(もう一度読み返した方が良さそうです)

オリオン座とカシオペア座

マイスターホラとカメのカシオペイア。
この二人?については作中でもそんなに深く描写されていませんが、普通に考えても地球産の人ではないようです……。
オリオン座とカシオペア座が関係しているのだけはさすがにわかるのですが、結局マイスターは地球の管理者なのか、はたまた宇宙の管理者かなにかなのでしょうか?? アライアンス?

そのまま受け取れば、時間(hour)の擬人化なのだろうと思うのですが……??
「少し前のこと」を予言するカメ、カシオペイヤとは一体……(ジョジョ5部の亀を思い出しただけになりました……)。



感想まとめ

灰色の男や、マイスターの家、例の花のことなど、気になるところはもっとたくさんあるのですが、尻すぼみになりながらこの三つの感想です。

物語全体を読むと、書かれた年代も関係なく、現代社会に投げかける「時間とこころ」についてとても考えさせられる作品でした。
現代のインターネット社会で、よりこの作品の問題は重くのしかかっていくのだろうと思います。

ぜひとも『モモ』の考察・感想が読みたいです。
本当に魅力的な素敵な作品だと思いますので、老若男女おすすめです。
N〇Kさん、素敵な出会いをありがとうざいます。