2019/07/01

『わたしを離さないで』/カズオ・イシグロ


わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)


教えられているようで、教えられていない。


あらすじ

施設で暮らしそこを離れて生活をしていた私は、長かった介護人の仕事を辞めることになった。そこで、思い出すのは施設での暮らしと、今まで働いていた介護の仕事についてだった……。


感想とネタバレ

三部構成です。
個人的には一部が面白かったです。

完走して抱いた感想は、ジュブナイル回想録もの……でしょうか。
なので、読者も大人向けと言うよりは、中学生から大学生あたりが読むと面白さがある印象です。

逆に伊達に年取っていない人には、設定もストーリーもよくあるものなので、文庫400Pもの大作を読んだ読後にしては、暇つぶしにはなりますが、作品から飛び抜けたものを感じとれたかというと……そうでもありませんでした。
(一部は面白かったです。引用も一部からです……)

この作品をジャンルに分けると、恋愛小説にはいる気がします。
SF設定が入ってはいるのですが、特別それがこの作品の根幹部分かというとあまり重要じゃない印象で、端的に言うと、イギリス人男女の三角関係もの。

タイトルについて個人的には、『ライ麦~』と同じ印象を受けたので読んでみたのですが、どうも同じように音楽からの引用だったみたいで、読んでいる途中はドキッとしました。

なので、「どう」なるか期待していたのですが、誰に言っているのか……結局わかりませんでした……。
読者に? トミーに? 作者が? 赤ん坊が??

作中はずっと主人公が「話し」をしているので、今までの出来事を「誰か」に伝えているというこの作風の一番の疑問はそこでした。

最初は「先生」なのかと思ったのですが、そんなことはなく、担当した介護人?それとも担当の介護人?に聞かせているのでしょうか??
一体誰にずっとこの話をしているのでしょう……。この話をするに至った経緯と言いますか……。う~ん。

訳者あとがきでは、この後、主人公は先生の介護人になるのではと書いてあって、自分自身はこれから提供者になるのかな?と思っていたのでなるほどと思いました。

ただそうなると本編のなかで、二人が赦されなかったのはなぜだったのか……謎なのですが……。