こんなに自分の職務を後生大事に生きてきた人間がはたしてどこにあるだろうか。熱心に勤めていたというだけでは言い足りない。それどころか、彼は勤務に熱愛をもっていたのである。 外套(がいとう)
あらすじ&オススメポイント
アカーキイ・アカーキエウィッチは、おんぼろの半纏(はんてん)を身にまといながら寒いペテルブルクの街で生きていた。そして彼はその着古して薄くなったその上着を繕ってもらおうと仕立て屋にその服を見せると、店主は新しいもの外套を新調するべきだと勧めてきたのだった……。ロシア文学……と少し足踏みしてしまいますが、思っていたよりも物語に入り込みやすく読みやすい短編です。
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感想とネタバレ
寒いロシアでの生活には必需品「外套(がいとう)」にまつわるお話になります。毎日毎日たんたんと働いていても、生活必需品でもある外套をすぐに手にすることができない暮らし。
けして高望みをしているわけでもなく、たんたんと毎日を生きている主人公。
それだけで十分だとその仕事に愛着をもって繰り返しの日々を送っている。
そんな日々にまるで降って湧いた「外套」。
我慢とよろこびと。そして、あっけなさ。……短編なのに、色々なものが詰まっている作品でした。
人はなぜ「真面目」だけで生きて行けないのでしょうか。
たいした欲もなく、ただただ、穏やかで慎ましい生活ができることを望んでいるだけなのですが……。
人のしあわせの度合いは十人十色で決められないことにおもしろさはありますが、それが故に天井がない感情だけに難しいです。
どこを見て、どこをもって、しあわせというのか。定義がないところもむずかしい。
しかもしあわせだと「満足」してしまえば、向上もなくなりますし、そうすると停滞・マンネリの人生は、幸せ・不幸せ……?
一番なのは中庸・バランスをうまく取っていく方法を、日々右へ左へゆるく修正していくことなのかも知れません……。 ということは必要なのは、柔軟さ……なのでしょうか。
この物語の最後のさいごに登場する「亡霊」の謎ですが、突き詰めると「ロシア」の国自身のことなのでしょうか??
詳しい解説を読んだ方がよりこの作品の意味が分かるような気がしました。
今度は時代背景も調べた上でもう一度読んでみようと思います。
青空文庫
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